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仙台家庭裁判所大河原支部 昭和34年(家イ)140号 審判 1960年2月22日

申立人 山田さよ子(仮名)

相手方 山田清栄(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

双方間の長男栄一(昭和三一年一二月○○日生)の親権者および監護者を申立人と定める。

理由

申立人は主文と同旨の調停を求める旨を申立て、申立の実情として「申立人と相手方とは媒酌人山部昌覚夫妻のなかだちを以て昭和二九年二月○○日挙式結婚し、同年六月○日婚姻の届出をした夫婦であつてその間に昭和三一年一二月○○日長男栄一を儲けたのであるが、相手方は僧侶の身でありながら同三三年暮頃から鈴木たみ子と不倫の関係を結び殆ど毎週のように土曜日毎に白石市内旅館で逢瀬を重ね、同三四年五月一〇日から一六日まで、肝臓病のため仙台市内の東北大学附属病院に通院治療を受けると称して申立人と申立人の実家の父母を欺き、四五、〇〇〇円の金員を調達させた上申立人の実家に止宿し、この間上記鈴木たみ子を仙台市内の旅館に泊らせておいて連日病院に通うふりをして同女のもとに通いつめ申立人が苦労して用立てた金員を同女のために蕩尽してしまつた。のみならずその後この事情を知つた申立人がようやく同女との関係を清算させたかと思うより早く、相手方はすでに別の女性川本より子とも不倫の関係を結んでいたのであつて、しかも相手方は申立人がかような関係に感付いていないのをいいことにして、今迄のようなことではいけないから東京に出て修業しなおすと称して申立人を欺き旅費を調達せしめた上上記川本より子を伴い同年八月二一日から二四日まで東京都内を遊び廻つて来たのである。この間申立人は貧しい寺の収入を補うため多大の犠牲を払つて結婚前からの職である小学校教員を続けて来ているのであるが、その職掌柄夫である相手方を深く疑うことをしなかつたのをいいことに相手方は上記のような手ひどい裏切り方をして不貞の行為を続けて来たものであつて、もはや申立人としては相手方を全く信頼することができないから同年九月二七日意を決して長男栄一とともに肩書住居の実家に身を引き別居している次第である」と述べた。

相手方は昭和三四年一二月二二日および同三五年一月一九日の本件第一、二回の調停期日に出頭して、申立人の主張する不貞の行為のあつたことは認めるけれどもこれらの関係はすでに清算しているので申立人の翻意を得て同居できるよう調停せられたい旨を申述べたが、同年二月一六日の調停期日および之に続く同月二一日の相手方住居地における現地調停期日には確たる理由を届出ることなく出頭せず、かたく離婚の決意をしている申立人との間の調停を暗に拒否する態度を示すに至つた。

一方調査の結果によると、本年に入つてから相手方は一応行状をつつしんでいるとはいうものの、申立人の指摘する従来の身持の点については相手方が一時勤務していた白石市役所○○支所や申立人の勤務する白石市立○○小学校はもとより、地域社会一般にもすでにひろく知れわたつて居り、殊に○○小学校および教育委員会当局においてはかような事情から来る申立人の教育者としての児童に対する立場の苦しさや児童に及ぼす影響を顧慮して本年三月の教員定期移動の際申立人の希望を酌んで申立人を比較的遠隔の他校に転出させることを計画しているが、法律上なお相手方と夫婦関係にあることがその障碍となつて行きなやみの状態にあることが窺われるので、離婚原因の存在について争のない本件においてはこの際単に調停を不調として終らしめるよりも申立人の真摯な意思を尊重して家事審判法第二四条第一項に則り調停に代る審判を以て終局するのが衡平に適合する所以であると思料される。

よつて調停委員の意見を聴き、調停にあらわれた一切の事情を斟酌して、双方を離婚し、双方間の未成年の子の親権者ならびに監護者を申立人に指定するのを相当と認め、主文のとおり審判する。

(家事審判官 蓑田速夫)

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